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人生100年時代のライフプランサポート

子の立場から生じる相続問題

1.親の財産の把握

 たとえ同居をしていたとしても、子が不動産以外の親の財産を詳細に把握していることは稀であると思います。

 この点については、銀行・証券会社・保険会社等から親に届く各通知を、①預金、②有価証券、③保険、④年金、⑤借入金等の項目に分けて、ファイルに整理してあげることから始めると良いと思います。そのうえで、時期を見て、弁護士に依頼して財産目録を作成することも、次の2と併せてご検討ください。

2.親に遺言書の作成をどのように切り出すか

 親子関係が良好であっても、子から親に対して万一の場合を考え遺言書を作成してほしいと切り出すことはハードルが高く、容易ではありません。話し方によっては、親子関係が悪化することもあるので注意が必要です。

 この点については、マニュアルはありませんので、親の性格や状況を弁護士に相談して、どのように話すのが良いかをご相談ください。最初は、簡単なエンディングノートに親の書きやすい項目から記入してもらい、将来の相続について親子で話せるような雰囲気をつくることから始めると良いかもしれません。

3.親の囲い込み

 従来は、両親のどちらかが生きている間は、相続問題が表面化することは少なかったのですが、最近は、長生きした「親の囲い込み」の問題が生じています。例えば、父親の死後、父親の財産を相続した母親が高齢となって身体能力・判断能力が低下したため、長男と同居し、あるいは施設に入居したが、長男が母親を他の兄弟に会わせないというのが「親の囲い込み」です。具体的には、長男が母親を他の兄弟と会わせないまま、母親の預貯金を使いこんだり、自分に有利な遺言書を作成する行為等が問題となります。その結果、母親の死後に、相続人間で使途不明金を巡って紛争になったり、遺言書の有効性が争われることも少なくありません。

 「親の囲い込み」の問題が生じた場合には、上記例で言えば、他の親族に相談して長男を説得してもらったり、長男の同意を得ないと他の子と面談させないという施設の対応について、行政の然るべき機関に苦情を申立て、調整を求める方法もあります。これらの方法が有効でなかった場合には、弁護士に相談して、①成年後見の申立てをすること、②親族間紛争調整調停を申し立てることも検討すべきです。なお①については、母親と面談できないと診断書の入手が難しいという問題がありますが、この場合も、対応策がないわけではありませんので、まずはご相談ください。

4.親が亡くなった場合

 親が亡くなったときは、親の財産の相続手続きが発生します。
 親の財産の相続手続きを行うためには、相続人を確定し、相続人全員で遺産分割協議を行い、各相続人が取得する財産を決めます。
ソフィア法律事務所では、相続人の確定や相続財産の名義書換のために必要となる基本書類の調査・取得サービスを行っています。

 相続人が円満に話し合いを行って遺産分割協議を行うことができない場合には、調停や審判を行うことになります。遺産分割協議が円滑に進められない場合には、調停等を見据えて対応する必要があります。

 亡くなった方に遺言書があれば、その遺言書に基づき財産の取得者が決められます。しかし、高齢の遺言者が作成した遺言については、作成時の遺言能力(遺言を作成する能力)の有無が問題になったり、遺言の内容が相続人の遺留分額を侵害している場合には、遺留分侵害額請求が行われることもあります(相続人が子2人であった場合には、相続財産の4分の1が遺留分となりますので、例えば、遺言書が一人の子に全財産を相続させるという内容になっていた場合、遺言によって財産を取得した子に対し、もう一人の子は相続財産の4分の1について遺留分侵害額を請求することができます)。

 ソフィア法律事務所では、遺産分割協議や遺言書に問題がある場合に、ご相談者の立場にたったご助言をいたします。

5.相続人及び相続分の確定

 相続が発生すると、遺言書があればその遺言書にしたがって、遺言書がなくかつ相続人が複数いれば相続人間での話し合い(遺産分割協議)によって、相続財産を取得することになります。

 そのため、まずは、遺言書の有無を調べる必要があります。

 そして、遺言書がない場合には、相続人をくまなく調査し、相続人を確定させます。その後、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議の合意に基づいて、相続財産が不動産であれば登記名義の変更、預貯金であれば解約等の手続きを行うこととなります。

 相続基本書類は、主に遺言書がない場合に相続人が相続財産を相続人名義にするための手続きを行う上で必要となります。

 

【相続人が相続財産を取得するまで流れ】

 ソフィア法律事務所では、相続手続きのために必要となる次の書類を相続基本書類と位置づけ、書類の調査・取得サービスを行います(費用について)。

 ①公証役場での公正証書遺言及び法務局での自筆証書遺言の検索と取得

 ②相続関係を裏付ける戸籍類の取得

 ③認証文付き法定相続情報一覧図の写しの取得

(1)遺言書の調査について

 遺言書には、遺言者の遺言内容を聞き取り公証人が作成する公正証書遺言のほかに、遺言者が自ら作成する自筆証書遺言があり、日付の新しいものが優先されます。

 公正証書遺言については、平成元年以降に作成されたものについては、全国の公証役場で検索することができ、公正証書遺言が存在すれば、公正証書遺言が保管されている公証役場で、その謄本を取得することができます。

 自筆証書遺言についても、令和2年7月10日から法務局で保管する制度が設けられました。遺言者がこの制度を利用していれば遺言書の原本が保管されている法務局だけでなく、全国の法務局からデータによる遺言書の閲覧(ただし、原本の閲覧は、遺言書が保管されている法務局となります。)や遺言書の内容を証明する遺言書情報証明書の交付が受けられるようになりました。

 公正証書遺言や自筆証書遺言の検索のためには、被相続人の除籍謄本、相続人であることがわかる戸籍謄本、本人確認証、印鑑証明書(公正証書遺言の場合)、請求者の住民票(自筆証書遺言の場合)が必要となります。

(2)戸(除)籍謄本類の取得について

ア 必要とする理由について

 相続が発生したこと(被相続人の死亡)や法定相続人(民法上相続人と認められる人)を特定するために必要です。

 法定相続人が複数名いる場合には、個々の相続財産を法定相続人の誰が取得するかを話し合い(遺産分割協議)で決める必要がありますが、その前提として法定相続人を特定する必要があります。また、法定相続人間で遺産分割協議が成立した場合には、その遺産分割協議書をもって相続財産を被相続人の名義から法定相続人の名義に移転しますが、その際に戸籍類を金融機関や法務局に提出しなければなりません。

イ 取得について

 法定相続人を特定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍類を取得する必要があります。多くの場合、取得する戸籍類は相当数となります。これは、戸籍は、夫婦単位で作られ、子供が婚姻するとその子について別の戸籍が作られること、戸籍の内容に変更がなくても戸籍自体がコンピューター化されるなど、さまざまな原因などにより新しい戸籍が作られるからです。

 また、戸籍類は、戸籍のある市区町村で取得しますが、本籍地が移転している場合には、複数の市区町村で手続きを行わなければなりません。したがって、取得する戸籍類は相当数になるのが一般的です。

(3) 認証文付き法定相続情報一覧図の写しの取得

ア 必要とする理由について

 法務局の認証文付き法定相続情報一覧図の写しは、次のような書面です。

  相続財産を法定相続人に移転するためには、相続財産が預金であれば金融機関での手続き、不動産であれば法務局での手続きが必要であり、その際、被相続人が亡くなったことや相続人を特定するために、相続関係を示す戸籍類の提出が求められます。

 相続人の預金が複数の金融機関にあったり、管轄を異にする法務局に不動産がある場合には、相続手続き毎に戸籍類の提出と返却を繰り返すか、相続関係を示す戸籍類を相続手続きの通数分取得しなければなりません。前者の場合には時間と手間が、後者の場合には、多額の費用がかかる可能性があります。

 法定相続情報証明制度を利用すると、法務局から認証文付き法定相続情報一覧図の写しを無料で相続に必要な通数の交付を受けることができますので、複数の相続手続きを同時に行うことが可能になります。

 したがって、相続財産が複数あり、複数の相続登記手続きを行うことが予定されている方にとっては、大変メリットのある制度です。

イ 取得について

法定相続情報証明書を取得するためのステップは次のとおりです。

① 必要書類の収集

 ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本及び除籍謄本

 ・被相続人の住民票の除票

 ・相続人の戸籍謄(抄)本

 ・申出人の免許証やマイナンバーカードの表面のコピーなど、氏名・住所を確認することができる公的書類

 ・各相続人の住民票記載事項証明書(法定相続人一覧図に相続人の住所を記載する場合)

② 法定相続情報一覧図の作成

 収集した戸籍類等から判明した法定相続人を一覧にした図を作成します。この図に法務局の認証を受けることになります。

③ 申出書の記入・登記所(法務局)への申出

 「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記入し、管轄の登記所に①で収集した書類、②で作成した法定相続情報一覧図とともに提出します。管轄の登記所は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地です。